ロンドンのナショナル・ギャラリー(National Gallery)は、世界的に有名な美術館のひとつです。2,600点以上の名画が所蔵されており、しかも常設展は無料で鑑賞できます。この記事では、ナショナル・ギャラリーを初めて訪れる方向けにわかりやすく詳細にガイドしていきます。
- アクセス、入口の場所
- チケットの予約方法
- 持込禁止物、禁止事項
- 館内マップ
- 必見作品15選とその展示場所
- カフェ情報
- 所要時間
- 1 ナショナル・ギャラリーの歴史と概要
- 2 アクセスと基本情報
- 3 チケットと入場料金
- 4 訪問の際の注意点
- 5 館内マップ
- 6 見どころと必見作品15選
- 6.1 ティツィアーノ『バッカスとアリアドネ』(2階・2番の部屋 ※現在非公開)
- 6.2 レンブラント『34歳の自画像』(2階・15番の部屋)
- 6.3 フェルメール『ヴァージナルの前に立つ女』(2階・16番の部屋)
- 6.4 ルーベンス『サムソンとデリラ』(2階・18番の部屋)
- 6.5 ディエゴ・ベラスケス『鏡のヴィーナス』(2階・30番の部屋)
- 6.6 カラヴァッジョ『エマオの晩餐』(2階・32番の部屋)
- 6.7 ゲインズバラ『アンドリュー夫妻』(2階・34番の部屋)
- 6.8 コンスタブル『乾草の車』(2階・40番の部屋)
- 6.9 ターナー『戦艦テメレール号』(2階・40番の部屋)
- 6.10 ゴッホ『ひまわり』(2階・43番の部屋)
- 6.11 スーラ『アニエールの水浴』(2階・44番の部屋)
- 6.12 パオロ・ウッチェロ『サン・ロマーノの戦い』(現在非公開)
- 6.13 ファン・エイク『アルノルフィーニ夫妻像』(現在非公開)
- 6.14 レオナルド・ダ・ヴィンチ『岩窟の聖母』(現在非公開)
- 6.15 ハンス・ホルバイン『大使たち』(現在非公開)
- 7 レストラン
- 8 混雑と所要時間
ナショナル・ギャラリーの歴史と概要
ナショナル・ギャラリーは、ロンドンの実業家ジョン・ジュリアス・アンガースタイン(John Julius Angerstein)のコレクションをイギリス政府が買い取り、1824年に設立された国立美術館です。
現在の建物があるトラファルガー広場にナショナル・ギャラリーが開館したのは1838年のことで、その後、寄贈や購入などにより増え続ける所蔵品に対応するために何度も拡張工事が行われてきました。
ナショナルギャラリーは現代美術や彫刻作品などは所蔵しておらず、レオナルド・ダ・ヴィンチ、フェルメール、レンブラント、ゴッホ、モネなど、13世紀中頃から1900年頃までのヨーロッパ絵画を展示しています。
また、すべての所蔵品が国民の所有物(パブリック・コレクション)とされており、特別展を除き観覧は無料となっています。
アクセスと基本情報
アクセス
ナショナルギャラリーは、ロンドン中心部のトラファルガー広場に面して建っています。
住所:Trafalgar Square, London WC2N 5DN, United Kingdom
最寄駅はいくつかあり、公共交通機関で簡単にアクセス可能です。
- Charing Cross駅(ベイカールーライン、ノーザンライン)から徒歩3分
- Leicester Square駅(ピカデリーライン、ノーザンライン)から徒歩5分
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バスは9, 12, 23, 29, 88, 139, 159, 176, 453などが付近を通っています。
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入口
ナショナル・ギャラリーの正面入口は、トラファルガー広場に面した大階段の上(↓マップの青い入口アイコン)。階段を上り入館すると、Level 2(2階)に着きます。
車椅子やベビーカーの方は、階段の右横にあるバリアフリー入口を利用できます(↓マップの赤い車椅子アイコン)。館内のLevel 0(0階)に着きます。エレベーターで、メインの展示フロアであるLevel 2(2階)に上がることができます。
営業時間・休館日
- 営業時間:10:00~18:00(金曜は21:00まで)
- 休館日:12月24〜26日、1月1日
チケットと入場料金
料金
常設の展示はすべて無料で鑑賞することができます。
期間限定でイベント的に行われる特別展は有料です。
予約方法
常設展の予約(無料)
常設展は当日ウォークインで入場することもできますが、確実に入場したい場合や混雑を避けたい場合は事前予約(無料)がおすすめ。
公式サイトのGeneral admissionページより予約できます。
- “Book now”の黄色いボタンを押す
- “Continue to book entry”を押す
- 日付を選択、時間、人数を選択し”Add to basket”
- 追加したいオプションがあれば”Add to Basket”
- “View Basket”
- カゴの中身を確認し”Check out”
- ログインもしくはアカウント作成
- 寄付する場合は金額を選択し”Add donation”、寄付しない場合は”No, thanks”
- 内容を確認したら”I agree to the…”のボックスにチェックし、”Confirm”をクリック
- メールでPDFのチケットが送られてくる。
特別展の予約(有料)
特別展は当日では埋まっていることも多いため、訪れたい方は予約がおすすめ。公式サイトのExhibitionsから予約できます。
- 予約したい展示の”Find out more”を押す
- “Book now”から予約に進む
訪問の際の注意点
持ち込めないもの
下記の物品は館内に持ち込むことができないのでご注意ください。
56 x 25 x 45cmよりも大きいバッグ
- スーツケース/キャリーバッグなど車輪つきの荷物
- 長傘
- 折りたたみ自転車、大人用スクーター、そのほか大型の物品
ナイフ、鋭利な物、その他危険物
スプレー、塗料
ヘルメット(着用不可)
入館時にセキュリティチェックがあります。
ベビーカーや、育児用品のための大きめのバッグは持ち込み可能です(中身のチェックはあります)
また、リュックは56 x 25 x 45cm以内であればOKですが、体の前に抱える必要があり、特別展においては持ち込みも不可となっています。
荷物や傘は、£2でLevel 0(0階)にあるクロークに預けることができます(大型の物品は預け不可)
写真撮影の禁止事項
個人的な写真撮影は基本的に可能ですが、下記の撮影は禁止されています。
- フラッシュ撮影
- 照明、三脚、自撮り棒の使用
- ライブ配信
- 同伴保護者の許可なく子どもを撮影すること
- その他「撮影禁止」の注意書きがある絵画やエリアの撮影
館内飲食の制限
展示室内での飲食は禁止されています。展示のない部屋においては、水を飲むことは可能です。
Level 0(0階)にレストランやカフェがあります(後述)
館内マップ
公式サイト>左上のハンバーガーメニュー>Visit us>Floorplansより、デジタルマップを見ることができます。
また、デジタルマップ画面で“Download floorplan”をクリックすると、PDF形式でのダウンロードが可能です。スマホやタブレットに保存したり、印刷しておくと便利。
紙のマップは現地で売られていますが、£2の支払いが必要です。
また、所々の壁にもマップが備えられており、見学の合間に参照することができます。
- 数字:展示室の番号
- ↑↓:エレベーター
- ハンガーのマーク:クローク
トイレはLevel 0(0階)にあります。利用は無料で、おむつ替え台もありました。
見どころと必見作品15選
ナショナル・ギャラリーには2,600点以上の西洋絵画が所蔵され、13世紀の宗教画から20世紀初頭の印象派まで幅広い作品が展示されています。
なかでも有名作品は、公式サイトのHighlights from the collectionにてまとめられており、時間が限られた観光の際には非常に参考になります。
さらに、その中でも最重要の必見15作品について、概要と展示位置をまとめたので、見学の参考にしてみてください。
公式の最新マップを参照しながら、2階の1番の部屋から部屋番号順(1, 2, 3…)に見ていくと効率的です。
ティツィアーノ『バッカスとアリアドネ』(2階・2番の部屋 ※現在非公開)
- 画家:Titian
- 英題:Bacchus and Ariadne
- 制作年:1520~1523年頃
ナショナル・ギャラリーで最も有名な絵画のひとつ。ギリシャ神話「バッカスとアリアドネ」で、ワインの神バッカスがクレタ島の王女のアリアドネに一目惚れし、戦車から彼女に飛びかかろうとしている場面を鮮やかな色彩で描いている。空に描かれている星座はアリアドネの冠がモチーフとされる、かんむり座。
レンブラント『34歳の自画像』(2階・15番の部屋)
- 画家:Rembrandt van Rijn
- 英題:Self Portrait at the Age of 34
- 制作年:1640年
レンブラントが描いた数十枚の自画像のうちの一枚。ルネサンス時代の構図に基づいて書かれており、ルネサンス時代の紳士服を着ている。当時の画家たちの社会的地位はもっと高くあるべきだったというメッセージが込められている。
フェルメール『ヴァージナルの前に立つ女』(2階・16番の部屋)
- 画家:Johannes Vermeer
- 英題:A Young Woman standing at a Virginal
- 制作年:1670~1672年頃
静寂と優雅さが漂うフェルメールの代表作のひとつ。若い女性がヴァージナル(小型の鍵盤楽器)の前に立ち、演奏の合間にふとこちらを見つめる瞬間をとらえている。柔らかな光の描写と、静謐な室内の空気感が絶妙に表現されている。
ルーベンス『サムソンとデリラ』(2階・18番の部屋)

- 画家:Peter Paul Rubens
- 英題: Samson and Delilah
- 製作年:1609~10年頃
聖書に登場するサムソンとデリラの物語が描かれている。金で買収されたデリラは、怪力男のサムソンを膝の上で眠らせ、髪を切って彼の超人的な力を喪失させようとしている。
ディエゴ・ベラスケス『鏡のヴィーナス』(2階・30番の部屋)
- 画家:Diego Velázquez
- 英題:The Toilet of Venus (‘The Rokeby Venus’)
- 製作年:1647~51年
女神ヴィーナスがベッドに横たわり、息子であるキューピッドが支える鏡を見ているが、鏡はぼやけており、ヴィーナスの顔はよく見えない。これは、美の化身といわれるヴィーナスに特定の顔や人物像を持たせない、というベラスケスの意思の表れであると言われている。
カラヴァッジョ『エマオの晩餐』(2階・32番の部屋)
- 画家:Michelangelo Merisi da Caravaggio
- 英題:The Supper at Emmaus
- 制作年:1601年
イエス・キリストが復活後、2人の弟子たちの前に現れた場面を描く宗教画。1人は椅子から飛び出そうとし、もう1人は両手を広げて驚くという一瞬を切り取っている。手前に伸びた弟子の腕や、テーブル上の果物やパンの立体感にも注目。
ゲインズバラ『アンドリュー夫妻』(2階・34番の部屋)
- 画家:Thomas Gainsborough
- 英題:Mr and Mrs Andrews
- 製作年:1750年頃
ロバート・アンドリュース氏、その妻のフランシス・アンドリュース夫人、そして所有していた土地を描いた「3重の肖像画」
コンスタブル『乾草の車』(2階・40番の部屋)
- 画家:John Constable
- 英題:The Hay Wain
- 制作年:1821年
コンスタブルの最も有名な作品で、最も偉大で人気のあるイギリス絵画のひとつ。作者の実家であるイングランドのサフォーク州の田園風景が描かれている。
ターナー『戦艦テメレール号』(2階・40番の部屋)
- 画家:Joseph Mallord William Turner
- 英題:The Fighting Temeraire
- 制作年:1839年
トラファルガーの戦いで活躍した戦艦テメレール号が、老朽化により解体されるために曳航されていくシーンを詩的に描いた名作。光の画家とも呼ばれるターナーによる、夕焼けの空と水面の幻想的な色彩に注目。イギリス国内にある絵画の中で最も人気のある絵画のひとつ。
ゴッホ『ひまわり』(2階・43番の部屋)

- 画家:Vincent van Gogh
- 英題:Sunflowers
- 制作年:1888年
ナショナル・ギャラリーを代表する人気作品。友人で画家のポール・ゴーギャンの訪問に備えて自宅に飾るために描かれた。
スーラ『アニエールの水浴』(2階・44番の部屋)
- 画家:Georges Seurat
- 英題:Bathers at Asnières
- 制作年:1884年
セーヌ川の川辺で水浴びをする、パリ郊外の労働者階級の若者たちが描かれた絵画。
パオロ・ウッチェロ『サン・ロマーノの戦い』(現在非公開)
- 画家:Paolo Uccello
- 英題:The Battle of San Romano
- 制作年:1438〜1440年頃
1432年のサン・ロマーノの戦いの様子が描かれている。中央にいるのは、白い馬に乗り赤と金の帽子をかぶったフィレンツェの指揮官ニッコロ・ダ・トレンティーノ。遠近法の発展において重要な一枚。
ファン・エイク『アルノルフィーニ夫妻像』(現在非公開)
- 画家:Jan van Eyck
- 英題:The Arnolfini Portrait
- 制作年:1434年
油彩画の技法に革命をもたらした、西洋美術史において非常に重要とされる有名作品。イタリアの裕福な商人夫妻が描かれており、奥の鏡には部屋に入ってくる二人の男が映っている。すぐ上の壁にファン・エイクのサインが書かれていることから、この鏡に映る赤い服の人物はファン・エイク自身ではないかと考察されている。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『岩窟の聖母』(現在非公開)
- 画家:Leonardo da Vinci
- 英題:The Virgin of the Rocks
- 制作年:1491~1499年、1506~1508頃
『岩窟の聖母』は2作品あり、一つはパリのルーブル美術館、そしてもう一つがこのナショナル・ギャラリーに展示されている。少しずつ異なる2バージョンの絵がなぜ存在するのか、どちらが先に描かれたものなのかは、未だに解明されていない。輪郭の縁をぼかすことで、人物が暗闇から浮かび上がるような陰影を表現している。
ハンス・ホルバイン『大使たち』(現在非公開)
- 画家:Hans Holbein the Younger
- 英題:The Ambassadors
- 制作年:1533年
二人のフランス大使が描かれた油彩画。左上の角にキリスト像が隠れていたり、ナナメから見ると画面下部に骸骨が見えたりと、さまざまな要素が隠されている。
レストラン
レストランやカフェがLevel 0(0階)にあります。
- Ochre:高級レストラン&バー
- Muriel’s Kitchen:セルフサービス形式のカフェ。デリ、ケーキ、コーヒーなど。
- Espresso Bar by Muriel’s:パックのサンドイッチ、コーヒーなど。

混雑と所要時間
土日でも内部はそれほど混雑しておらず、快適に見て回ることができます。
ただし、入館時に列に並ぶ必要があるため、余裕をもって到着しておくのがおすすめです。
所要時間は、必見作品のみにしぼってサッと見るだけなら1時間程度、全体的に鑑賞する場合は2~3時間を見込むと良いと思います。じっくりと鑑賞したい美術好きの方は、半日いても楽しめると思います。